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ボツリヌストキシン
ボツリヌストキシンとは、ボツリヌス菌から作りだされた神経毒のことです。ボツリヌストキシンには筋肉の働きを抑える作用があるといわれ、しわの改善や小顔効果などに用いられます。
厚生労働省承認:ボトックスビスタ
ボツリヌス菌というと危険なイメージがありますが、美容注射で用いられているボツリヌストキシン溶剤は、濃度も薄く、適切に使用すれば、身体に害を与えるものではありません。ここでは、ボツリヌストキシン溶剤の中でも、厚生労働省に承認されている溶剤をピックアップして紹介しています。
ボトックスビスタの効果
ボトックスビスタは、65歳未満の成人の、眉間や目尻の表情じわに効果があるといわれています。
1回の注射の効果は2、3日後にはあらわれて、2週間後にはピークを迎え、その後3~4カ月、持続するといわれています。効果を維持するためには、継続することが大切ですが、次の治療には3カ月以上の期間を空けましょう(効果の持続期間には個人差があるので、次の治療の時期については、医師の診断を仰ぎましょう)。
ボトックスビスタの成分
アメリカではFDAの承認により2002年から眉間の表情じわの改善に使われてきたボトックスビスタ。日本では2009年に厚生労働省の承認を受けています。眉間の表情じわや目尻の表情じわの治療に使用できるA型ボツリヌス毒素製剤として製造販売承認を受けている医療用医薬品。
天然のタンパク質からできた毒素を分解・精製しているので、ボツリヌス菌の菌体や成分、培養液の成分などは含まれていません。
A型ボツリヌス毒素製剤は、眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、痙性斜頸(けいせいしゃけい)、小児脳性まひ患者の下肢痙縮などに伴う尖足、重度の原発性腋窩多汗症、斜視など、さまざまな疾患の治療で使用されています。
ボトックスビスタのお肌への作用
筋肉内にA型ボツリヌス毒素が注射されると、A型ボツリヌス菌は運動神経終末の受容体に結合し、細胞内部に取り込まれます。取り込まれたA型ボツリヌス毒素は、細胞内にあるエンドソームの中に入り込むのですが、毒素の中でも分子量の軽い方(軽鎖)が、エンドソームから細胞質内へと放出されます。
放出された軽鎖の毒素は酵素として働き、神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を阻害。それによって神経筋伝達が遮られ、筋弛緩作用があらわれます。その結果、筋肉の収縮を抑えて、しわを一定期間、改善する効果が見込めるという仕組みです。
神経筋伝達を遮られた神経は、時間が経つにつれて筋繊維上に新しく神経接合部を形成。さらに時間が経つと、ボツリヌス毒素の影響を受けた運動神経終末の機能が回復し、神経筋伝達は数カ月後に再開通して、筋弛緩作用は消えていきます。そのため、ボトックスビスタの効果の持続期間は3~4カ月といわれています。
ボトックスビスタの治療可能部位
眉間、目尻、おでこ、エラ、下あご、口の上のしわ、鼻のしわ、首の横しわ、リフトアップ(フェイスライン)。とくに眉間の表情じわや目尻の表情じわの改善のため用いられています。
しわの改善のほか、頭痛や肩こり、ワキガ・多汗症の治療にも用いられることがあります。
ボツリヌストキシンにアレルギーってあるの?
基本的にアレルギー反応が起こる可能性は低いといわれていますが、眉間の表情じわを対象にした使用成績調査において、1,566例中アレルギー性皮膚炎が1例だけ報告されています。
同調査では、眼瞼下垂が3例、注射部位疼痛が3例、帯状疱疹が1例、口の錯感覚が1例、筋委縮が1例、ざ瘡が1例、湿疹が1例報告されているといわれています。
その他、アナフィラキシーショック、血清症、重篤な角膜露出、角膜潰瘍、角膜穿孔、持続性上皮欠損、嚥下障害、呼吸障害、けいれん発作などの重大な副作用があらわれたという報告もあるそうです。